子どもが眠るまえ、
「おやすみ」と言って髪をなでる。
夫のマグカップを静かに流しに運ぶ。
朝、テーブルに置いたパンをちぎって渡す。
子どもが眠るまえ、
「おやすみ」と言って髪をなでる。
夫のマグカップを静かに流しに運ぶ。
朝、テーブルに置いたパンをちぎって渡す。
洗濯物をたたむ手。
食器をしまう手。
背中をさする手。
この手は、いつもだれかのそばにある。
それがわたしにとって、ごく自然なことだった。
そんなふうに、
あたりまえのようにふれている日々のなかで、
ある日ふと気がついた。
わたしが肌にのせているものは、
そのまま、家族にもふれているのだと。
何気なく選んできたもの。
なんとなく使ってきたもの。
そのひとつひとつが、
知らないうちに、大切な人とつながっていた。
だから選び方を変えた。
目立たなくても、香らなくても、
信じられるものだけを選ぼうと思った。
やさしさって、
言葉じゃないところで働くものだから。
誰かの暮らしに、しずかにまざるものだから。
それをわたしは、
愛情と呼んでもいい気がしている。
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